会社経営者の皆さまへ
5.中小企業と会計
(1) 決算書は、税務申告のためにあらず!
「税務申告がなければ、決算なんてやらなくていいのに。」という人がいます。
本当でしょうか?
利益や財政状況を一定の会計ルールに従って、体系的にまとめたのが「決算書」ですが、決算書は見慣れないと、どこに何が書いてあるのかがわからず、数字の羅列を見て、頭が痛くなるだけです。
決算書自体は、科目名と金額から構成されており、「何にいくら」という内容を示すものですから、日々の売上金や、使っている費用が、どのような科目で集計されているかについて理解していれば、その金額が多いのか少ないのか、把握することができます。
決算書は、経営を数字面からチェックできる貴重な情報なのです。まずは、科目名について、どのような取引金額を表示するときに使うのか確認してみましょう。
次に経営者としての金銭感覚と決算書とのズレがあった場合、そのズレの原因について考えてみましょう。会計処理の方法によるものもありますが、単に使いすぎが原因ということもあるでしょう。
こうして、決算書の内容をチェックできるようになれば、ドンブリ勘定は是正されているはずです。
経営の状況を確認するには、「比較」という作業が必要です。正しい「比較」を実現するには、一定のルールが必要です。これが「会計」の役割です。1年という期間で区切るのも、納品したら売上に計上するということなどが、蓄積されてできたものが、会計のルールなのです。
(2) 予算を作成して、実績とチェック
月次決算を行うのは、月単位で、経営状況をチェックするためです。
消極的な意味では、処理をためないというのも重要なことです。1年分の取引を、税務申告期限を目前にして、年1回まとめる作業などに、ろくな事はありません。
積極的な意味では、前月までの実績把握と、今後の計画のために、月次決算を活用しましょう。
月次決算を行っている経営者の皆さまには、ぜひ、「予算」をつくることをお勧めします。「当期は設備投資を行いたい」、「これぐらいの利益を出したい」といった計画を、年初または期首にたてて、その進捗状況を月単位で確認していきます。
「よい予算」とは、実績とのブレが少ないものです。ブレが少ないからこそ、計画がたてやすくなり、実現可能性という面で、経営に対する信頼感も生まれてきます。
(3) 正しい決算書でなければ経営の役に立たない
決算書を読むというのは、比較の作業でもあります。具体的には、前期・前々期との比較、予算と実績との比較。同業他社との比較。財務分析の様々な指標などとの比較を行います。
正しい決算書でなければ、これらの比較は無意味となります。
ですから、決算書から何を読み、経営に役立てていこうかと思えば思うほど、正しい決算書の必要性を痛感するはずです。
たとえば、資金繰りの状況を見る場合は、滞留している売上債権を除いて考えなければなりませんし、会社の価値をみるには、価値が目減りしている資産がないかどうかを調べるのは、重要なことです。
(4) 会計参与は中小企業経営者のサポーター
会社法の施行により、「会計参与」という会社の役員が生まれました。税理士・公認会計士・税理士法人・監査法人のみが就任でき、取締役とともに決算書(計算書類)を共同作成するという役割を果たします。要するに、会計の専門家が、決算書の作成に関与したという「お墨付き」を与えるのです。
税理士等の税務顧問の本来の業務は、会社が作成した決算書をもとに、課税対象となる所得・税額を計算し、税務申告書を作成することですが、会社との契約によっては、決算書を作成する段階までの業務を請け負っています。
監査は、会社の決算書が会計ルールに従って作成されているかどうか等を調べるもので、公認会計士や監査法人の専門領域です。
会計参与は、監査とは異なり、自らが、取締役と一緒に決算書等を作成することが特徴です。
また、会社の役員ですから、株主代表訴訟の対象になるなど、役員としての責任もあります。
正しい決算書を作成するにも、中小企業が専門的な会計知識のある人員を確保するのは難しいことです。そのような状況をふまえて、中小企業の決算書の信頼性を確保するために創設されたのが、「会計参与制度」です。
