6.令和5年10月のインボイス制度開始までに準備しておくこと 

■ 自社が交付するインボイス
インボイスとは、一定の事項が記載された請求書、領収書、納品書等の書類をいいますが、一つの書類ですべての記載事項を満たす必要はなく、たとえば、請求書と納品書というように、複数の書類をあわせてインボイスとすることが可能です。自社が何をもって、インボイスとしては交付するか、請求書だけにするのか、納品書とセットにするのか等、その交付方法を考えておきましょう。
また、通常、契約書に基づいて口座振替等によって代金決済が行われる場合、取引の都度、請求書や領収書は交付しないことが多いです。取引の相手方が仕入税額控除を受けるためには、インボイスの交付が必要なので、口座振替を利用していても、請求書を発行するようにするのか、契約書を修正して登録番号などを必要な事項を追加記載して、インボイスとするのか、検討が必要です。

 

 請求書発行システムや会計ソフトの修正
インボイスには法定の事項を記載しなければならないので、請求書等のフォーマットや端数処理の計算方法の変更が必要です。また、会計ソフトへの仕訳入力の際、10%や軽減税率8%といった税率別の入力メニューに加えて、「適格請求書発行事業者でない事業者からの仕入れ」について、別管理する必要があります。各ソフト開発会社から提供される会計ソフトでは、新しい課税区分をつくって対処するものと思われます。

 

■ 仕入先、購入先の確認
店舗や事務所、駐車場等の賃料の支払、フリーランスの外注先への支払、個人商店での飲食、物品の購入等、相手方が「適格請求書発行事業者でない事業者」の場合は、経過措置はありますが、段階的に仕入税額控除が受けられなくなります
まずは、該当しそうな取引があるかどうかを確認し、そのような取引がある場合、引き続き取引を続けるのか、取引を続けるにしても支払金額について変更を求めるのか、または、相手方に適格請求書発行事業者になる意向があるかどうか確認するかなど、対応方法を検討しておくとよいでしょう。

 

■ インボイスの保存義務
仕入税額控除を受けるためには、帳簿に一定事項を記載するとともに、インボイスの保存が要件とされています。現行制度では、課税仕入れに係る対価の合計額が3万円未満の場合は、帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められていましたが、この措置が、次の場合を除いて、廃止されます。従って、3万円未満の細かい金額の領収書や請求書も、インボイスとして保存が必要になります(注)。細かいことをいうと、買掛金の支払をする際の振込料相当額の減額(値引き処理)や、カード明細書で仕訳入力を行っている場合などは、振込料やカード払いした取引に係るインボイスの保存が必要になりますので、今まで以上に、書類の保存に留意する必要があります。

(注)令和5年度の税制改正で、基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が行う課税仕入れについては、税込1万円未満であるものについては、一定事項を記載した帳簿のみを保存するだけで、つまり、インボイスの保存がなくても仕入税額控除が可能となりました(令和5年10月1日から令和11年9月30日までの期間)。該当する事業者は、税込1万円未満の課税仕入れが、免税事業者からの仕入れであっても、全額仕入税額控除の対象になりますので、仕訳計上時の課税区分の入力には注意が必要です。

 

インボイスの保存義務が免除されるもの
仕入税額控除の適用を受けるためには、インボイスの保存が必要ですが、例外として、次の取引については、一定の事項が記載された帳簿の保存により、仕入税額控除が認められます
たとえば、中古車や中古住宅の転売業者は、商品の仕入れの相手方が、事業者でない一般個人であることが多いため、その仕入れ税額控除を認めないと、大変な税負担となりますので、取引の影響を考慮して、このような措置がとられました。

【インボイスの保存義務が免除されるもの】
①公共交通機関による旅客の運送(3万円未満のもの)
②入場券等が使用の際に加州されるもの
③古物営業者による古物の購入
④質屋による質物の購入
⑤宅地建物取引業者による建物の購入
⑥再生資源および再生部品の購入(購入者の棚卸資産に該当するものに限る)
⑦自動販売機および自動サービス機からの商品・サービスの購入(3万円未満のもの)
⑧郵便切手類を対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに投函されたものに限る)
⑨従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費、日当および通勤手当等